様々な組織や第三者委員会でコンプライアンスを担当されている著者の、この20年の集大成とも言える一冊。
内容は理論編と実践編に分かれている。
まず、理論編の導入として『五箇条の御誓文』の内容が今の時代に非常にマッチしている点に驚かされた。
また、ルールだけでは解決できない問題への対応が、まさにコンプライアンスへの取り組みであり、大量のルールを守ることは現実的でないとの指摘は、非常に現場感覚に近い。日本社会では社会からの要請を法令等に反映させるタイムラグが大きいため、それでは処理できない実態を、各村(業界や組織)の掟で適応させてきた現実があるとの指摘や、与えられた課題を的確にこなす能力や知識量では人間はAIに勝てないなど、納得感のある環境認識を前提として、タイトルそのものである解決策が提示されている。
実践編では、研修計画の立案や、実際に実務でリスクコミュニケーションとしての対話方法にまで言及されており、指南書として使用できる水準で、実際にコンプライアンスを推進される方にとって、最も心強い味方となるであろう。上場企業の社外役員である私も、参考になる部分は多く、リベラルアーツ、自分事化などコンプライアンスについてあらためて感度が高まりを感じた。